小説を漫画にしてもらえる、漫画原作コンテストって最近増えてますよね。
小説家になろう、エブリスタ、ノベルバ、Pixiv、Nolaなど、様々な所でコンテストが行われています。
ハナ自身も二度ほど漫画原作コンテストに受賞して、現在漫画にしてもらっている最中なのですが、
編集様から届くネームを確認しながら、漫画原作に向いている作品の傾向が少し見えてきたので、皆様と少し共有出来ればと思って記事にしました。
そして経験談からこう書いていれば、もっとスムーズに作業していただけたんだろうなーと思うやらかしちゃってるエピソードなんかも踏まえて、皆様が二の轍を踏まないようご紹介出来ればと……
目次
漫画原作に向く小説の3つの特徴
実際にどんな小説が漫画原作に適しているのか、ハナが感じた3つの特徴を分かりやすく解説していきます。
1、絵にした時に派手な演出(見せ場のシーン)があるか
小説と漫画の大きな違いは絵で見せる事です。
登場人物の表情や見た目、服装、場所などを小説では細かく書いてあるものを、絵だと1コマで現す事も可能です。
朝起きて朝食を食べて学校へ登校し授業を受けて家に帰る。そんな日常シーンが何のイベントもなく淡々と漫画として描かれていても正直面白くないですよね。
ライバルが登場して何かを競いあったり、
ヒーローやヒロインとの心を揺さぶられる絡みが出てきたり、
変なアクシデントに見舞われたりと、
これから起こるワクワクするシーンがあってこそ、続きが気になって読みたくなります。
ざまぁ相手を撃退してスカっとしたり、ヒーローやヒロインとの浮き沈みあっての急接近、窮地からの脱出など、1話の中に1つは絶対見せ場を作る。
その見せ場が絵にした時に派手でかっこよければさらに最高です。
1話の中でカッコいいシーン、見せたいシーンは何かを意識してお話づくりをしていくと良いかもしれません。
2、毎話ごとに読者を引きつける幕引きがあるか
週刊少年ジャンプの読者投票至上主義って皆様ご存知でしょうか?
私、子供の頃から兄の影響でジャンプをよく読んでおりまして、子供の時は応募者プレゼント狙いで送ってたあの人気投票のはがきが、漫画が継続するための大事な1票だと当時は存じておりませんでした。
大人になって知ったのですが、漫画って本当に1話1話が勝負なんだなと……
面白い新作の掲載順位がどんどん後ろに下がっていくと切ない気分になって読んでました。
そして俺達の戦いはこれからだ状態で終わっていくのです。
瞳のカトブレパス、逢魔ヶ刻動物園、アリスと太陽
個人的に上記の3作品が好きで、もっと長く連載して欲しかったです。
とまぁ、1話で読者を掴めないと、2話なんて読んでもらえません。
つまり、毎話毎話の最後に続きを読みたくなる工夫が必要なんです。
ピッコマなどで最近流行の韓国で作られたWebtoon作品は、ジェットコースター展開で読者を飽きさせない工夫のされたお話が多かったりと、ストーリーに起伏のある物語が多いです。
・悪役のエンディングは死のみ
・捨てられた皇妃
・悪女は砂時計をひっくり返す
・悪女はマリオネット
・外科医エリーゼ
・伝書鳥の王女様
【スピード婚~若き社長との契約~】
契約結婚ものを読んで見たくて、たまたま無料券を10枚ゲットして読み始めた作品。
ストーリーは主人公が次々とハプニングに見舞われて、分かりやすいほどヒーローと気持ちがすれ違っては少し近づきを繰り返す、何ともエネルギッシュな作品でした。
この作品ほど恋愛面においてジェットコースター展開で波乱イベントをこれでもかと盛り込んだ作品を私はかつて見た事なかったです。
世界観のベースが日本風に手直しされてはいますが、原作は韓国の漫画なので少し違和感を感じる所はありますが、そんなの気にせずジェットコースター展開見てみたいって方は是非読まれてみてください。
どのWebtoon作品にしても、共通点は読者を掴んで離さない工夫が盛りだくさん!
1話1話がそんなお話構成になっていたら、もう漫画原作のためにある小説なんじゃないかって正直思います。
つまりそういうジェットコースター展開で毎話を引きで終わらせている小説こそ、漫画原作に選ばれやすいのではないかと思うのです。
小説投稿サイトにアップするWeb連載形式の小説もある意味1話1話が勝負です。
数ある小説の中で、面白くなければ読者様はすぐにブラウザバッグして違う作品をお読みになられます。
1人でも多くの読者様をエンディングまで連れていきたい。
そのためにはどうすれば良いか……1話1話の終わりごとに続きを読みたくなる工夫を入れるに限ります。
その構成こそが漫画原作に必要な引きにそっくりだと思うのです。
当時週刊連載されてた作品で特に幕引きが秀逸だったなと感じたのは
約束のネバーランド、デスノートの2点です。
両方ともミステリー要素を含んだ作品なのですが、物語の最後に謎を残したり、危機的状況で終わったり、究極の選択を迫られたりと、続きを読ませる工夫がとにかくすごい。
当時、ジャンプで一番最初に読んでいたのがこの2作品でした。
ジャンプの週刊連載で人気がなければ容赦なく打ち切られる過酷な環境の中で、一番最初に読みたいと思わせるストーリー構成と幕引きの強さ。それを当時のリアルタイムで追いかけて読めた経験はとても貴重なものだったなと思いました。
なので漫画原作を狙う小説は、1話を3000字前後ぐらいで統一して、なおかつ見せ場と引きを入れる構成を心がける。
それが出来れば漫画編集様に、漫画としてイメージしてもらいやすくなり原作として採用頂ける確率が上がるかもしれません。
そして可能なら個人的に1話を番号にするより、サブタイトルをつけた方が良い気がします。
ここからは余談ですが、コミカライズ作品は基本的に、漫画家様やネーム担当の構成様などが小説を読んで作ってくださいます。
見せ場のシーンを大カットにしたり、販売される漫画形式のページ数などに合わせて引きを考えてページ構成をしてくださったりと、色々工夫されて小説をネームに落とし込んでくださいます。
1話ごとにそれが最初から出来ていれば、ネームに落とし込んでもらう作業も多少は楽になるのかなと思います。
なおかつ小説の書籍化も狙う場合は、10万字区切りで一つの大きな事件がハッピーエンドで幕を閉じてればさらに最高だと思います。
1話を「起承転結」で綺麗に終わるのではなく、あえて「前回の結+起承転」で止める事で、続きを読みたいと思える1話が完成しやすくなる気がします。
ただ言うのは簡単なのですが、毎話毎話それを作るのはかなり難しいのも事実なのですよね……
3、キャラクターの行動と感情の動きが連動して魅力的に描かれているか
漫画に必要とされるのはやはり、魅力的なキャラクターだと思います。
Web小説は特に主人公に感情移入されて読む方が多いと思いますが、漫画の場合は一線を引いて読むため、サブキャラ達に感情移入される方も多いです。
主人公より人気のある悪役キャラ、メインヒロインより人気になるサブヒロインなんてよく聞く話ですよね。
なので1人1人の登場キャラクターをいかに魅力的に見せれるかが、漫画ではとても大事になってくると思います。
ではどうやってキャラクターを立たせるか、それはそのキャラクターの持つ個性をブレさせない事だと思います。
無口キャラなのに、物語の都合で説明語りをベラベラさせていたり
優しいキャラなのに、相手の心を無意識に踏みにじる発言や行動をしていたり
聡明なキャラなのに、物語の都合で誰でも見破れる簡単なトリックに気付かせてもらえなかったりと
物語の展開のせいで、無理にキャラの個性が捻じ曲げられてしまったら魅力的なキャラにはなりえません。
サブキャラに至るまで一貫性のあるキャラを描き、そこから生まれる人間ドラマがストーリーに深みを持たせ魅力的にしてくれます。
その緻密に育ててきたキャラの個性や思いが、終盤に今までの主人公とのやり取りで少しだけ変化をみせる。
敵対していたライバルキャラが少しだけ歩み寄って終盤に主人公のピンチを救う展開などは、まさしくその最終形態だと思います。
私自身、森沢明夫先生の「プロだけが知っている小説の書き方」という本を読んで、初めて小説の書き方について勉強しました。
この本の中で森沢先生が、キャラクターを魅力的にする方法として
人気の出る物語は、サブキャラにまで長所と短所が備えられている――つまり、サブキャラまで、ちゃんと活き活きとしている物語は面白い
と述べられています。
この方法を実践して、私は「呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ」を書きました。
主要キャラクターの設定を最初にある程度考えてまとめ、それぞれ「一番大切にしたいこと」と「これだけは許せないこと」を決めていました。
何に触れたらそのキャラクターは怒るのか、人の怒りどころってそれこそ今まで歩んできた人生で培ってきた価値観の中で芽生える感情だと思うので、そこだけはきちんと最初に決めていました。
ちなみにこれは完全に余談なのですが、私自身よくゲームを昔やっておりまして、テイルズ系のゲームが大好きでした。
「テイルズ オブ ジ アビス」の主人公ルークが、前半と後半で成長してがらりと印象が変わるのですが、そこに至るまでの物語の見せ方が本当にすごいなと思います。
もしゲームやったことないよって方はアニメ版を是非見て欲しい!
貴族のぼんぼんであるルークは最初、お店の商品はお金を払わないといけないという常識さえ知りません。
それは彼がそれまで育ってきた環境でそのような事をする必要がなかったからです。
物語のターニングポイントとして、自分のやってしまった事で多くの人の命が犠牲になるシーンがあるのですが、そこからの成長がめざましくて、エンディングを迎えた時、本当にすごい物語だったなと感動したのをよく覚えています。
生まれた意味を知るRPG……このフレーズが最高に格好良すぎて、
主題歌の「カルマ」がアニメ化しても主題歌を譲らなかった名曲というのも納得で、
ルークの生き様をまんま歌にされたような歌詞のように聞こえるのに、
ゲームのために書き下ろされた歌詞ではなく、
藤原さんの音楽性とゲームの方向性が奇跡的にマッチした神曲!
最高のめぐりあわせで作られたゲームで、最高の物語として私の中にずっと刻まれています。
漫画原作にしにくい小説の4つの特徴
漫画に向いた小説というのをこれまでお話してきましたが、
じゃあ逆に漫画原作として向いていない小説はどんな小説なの?
なるべく地雷は踏まないようにしたいよって方のために、
こういう感じだと漫画にはしにくいだろうなという小説の特徴をご紹介していきます。
1、地の文だけで進んでいくモノローグが多い
特に最初のプロローグなどで、世界観の説明やこれまでの過去の出来事などを淡々と書いてる小説は要注意です。
言葉では簡単に書いたつもりでも、それを絵にするのにめちゃくちゃコマを使う描写の文章は漫画に向いていません。
漫画の冒頭で読者が読みたいのは、ダラダラとした世界観の説明語りや興味のないキャラの過去ではないと思うのです。
1話切りがシビアな漫画の世界の冒頭でそんな事をしては続きを読んでもらえません。
過去を語るのはキャラの魅力を読者様に届けた後にじっくり使えば良いと思うのです。
世界観は文字ではなく絵で語る。建物、服装、小物など絵で見せて世界観を読者に伝える事に重きをおくべきです。
- 本当にその世界観の説明が必要かどうか(情報は必要な時に必要な部分だけ描写を心がける)
- 主人公の独白で感情を語るよりも、行動で示した方が視覚的にも伝わりやすい
- 思い入れのないキャラの過去話に、読者は基本興味がない
漫画は限られたコマ数で読者にその物語を伝えなければなりません。
最初の1話で伝えるべきは大まかな舞台設定と、そこでどんなキャラが何をする物語なのか。
それを面白く魅力的に伝えるシーンを冒頭に持ってくる方が掴みとしては強いと思います。
さらに1話ごとに、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのようにした)かを明確に書いておくと分かりやすいです。
この時、「なぜ」か「どのようにした」かをあえて次の話に持っていくのも引きとしては強くなると思います。
2、長文台詞で会話している
私もこれを結構やりがちなのですが、漫画の吹き出しに入る台詞ってかなり少ないんです。
数行もある長い台詞で会話しているシーンなどは特に漫画として描きづらい側面があります。
作者としてはキャラに色々自分の思いを語らせたい!
ってついつい台詞が長文化しがちなんですよね。
ここで他のキャラ達にこの説明を入れておかないとという作者の都合で長くなる台詞もしかり。
物語の都合で長文化されたキャラの会話は、漫画とは本当に相性が悪いとネームに仕立ててもらいながら反省中だったりします。
原作通り忠実に文字を拾って漫画を描く事は出来ません。
小説からネームを起こす際に漫画家様は、小説から今後必ず必要な情報をうまく抽出してからネームに落とし込んでくださいます。
キャラの台詞だって簡略化されますし、現実世界で1人で長々と話して会話なんてしませんよね。
1、本当にその台詞は全部必要か考える(絵という媒体で見せる事を考え、表情や行動で示せる思いは体で示す事も視野に入れる)
2、簡略化出来る言い回しがないか考える(類語辞典などを調べると良いです!)
3、どうしても必要な時は途中でキャラの動作(目線や動作、表情の変化など)を地の文で書き足して台詞を分ける
相手との言葉のキャッチボールは、本当に伝えたい言葉だけにしておいたがよいと台詞を書く時は念頭に置いて執筆すると、台詞の長文化は防げるかもしれません。
3、場面転換や動きが少ないシーンは絵にすると地味
1話まるまる同じ場所で動作も少なく展開するストーリーは、注意が必要です。
絵にするとすごく地味じゃありませんか?
・特に動きもなく会話だけがダラダラ続く
・主人公の独白(モノローグ)の内面描写だけで終わる
絵にするとどこが見せ場なのかも分かりづらい上に、
主人公の内面だけ解決しても、周囲の環境は何も解決してません。
漫画だと内面描写は極力省いて絵で、行動で見せる方が効果的です。
例えば、優しいキャラの一面を描いた描写にしても
台詞で彼は優しいと褒め称えるより、
実際に彼が行った優しい行動を絵で描いた方が伝わりやすくありませんか?
小説を書く時にも言える事なのですが、キャラの特徴を伝える時に大事なのは
台詞で「彼は思いやりがある優しい人」と言って読者に説明文で印象付けるのではなく、彼が具体的に何をどうしたから優しいと感じたのか、具体的なエピソードを描写する。
・「これ使えよ。俺、家近いから」と言って主人公に傘を渡して自分は濡れながら走り去る。
・「よかったら一緒に帰らない?」と主人公を誘って傘の中に入れてあげる。その際、自分が濡れるのも厭わず、なるべく主人公が濡れないように傘をわざと主人公の方に傾けてヒーローは傘をさして歩いている。
ネームに落とし込んでもらう際に描写をすっ飛ばしていると、
〇〇が伝わる具体的なシーンを入れたいのですが、何か良いエピソードありませんか?
的な感じで編集様に尋ねられたりすることもあります。
つまり最初からそれが伝わる簡易エピソードを描いていたら、めちゃくちゃ分かりやい上に漫画にしやすいと思うんです。
4、キャラや地名がやたらと長い
カッコいい名前や地名にしたくて、やたらと長い名前や家名、地名をつけるのはやめたがいいです。
私自身、それですごく後悔しております。
書いた時はまさか漫画化してもらえるなんて夢にも思っていませんから、何となく響きがカッコいい、可愛い感じにしてつけがちな名前。
これを漫画に落とし込む時、名前や地名だけでやたらと文字数を取る問題が発生します。
伝えたいのは長い名前や地名じゃない。
キャラの会話をもっと見せたいのに、呼びかける名前が長すぎて台詞枠を圧迫……喋らせたい台詞が入らない! となるのです。
漫画は文字数が増えれば増える程、読みにくい印象を与えてしまいます。
固有名詞が長い=読みにくい印象を与える確率大幅アップ
特にそれを感じているのが自作品だと「汚名を着せられ婚約破棄された伯爵令嬢は、結婚に理想は抱かない」という作品から
フォルティアナ・ブラウンシュヴァイク(主人公:フルネームが18文字!)
愛称でティアと略して皆に呼ばせていますが、家名だけは短く出来ない……ここに身分の伯爵令嬢まで加わると22文字ですよ!
ブラウン、シュヴァイク、ヴァイクとか、短くてよかったよなと今になってやらかしてるなぁ……と遠い目をしております。
ネームを作ってもらっている構成様に本当に頭が上がらない日々でございます。
皆さんも私のように失敗しないよう、出来れば名前や家名は長くても5文字ぐらいを目安につけた方が良いと思います。
まとめ
小説を漫画原作にしたい方に知っておいて欲しい特徴を、7つご紹介してきました。
- 絵にした時に派手な演出(見せ場のシーン)があるか
- 毎話ごとに読者を引きつける幕引きがあるか
- キャラクターの行動と感情の動きが連動して魅力的に描かれているか
- 地の文だけで進んでいくモノローグが多いのはNG
- 長文台詞で会話しているのはNG
- 場面転換や動きが少ないシーンは絵にすると地味なのでNG
- キャラや地名がやたらと長いのはNG
私自身が経験して感じた事や、本で学んだこと、編集様とやりとりする中で最初にこうしておけばよかったなといった失敗談などを交えています。
もし自作小説をコミカライズして欲しい方や、漫画原作にこれからチャレンジしてみたい方は、上記の項目を意識して書かれてみてください。
私自身、忘れないようにメモとしてこの記事を残しておきます!
また何か気付いた事があれば、その都度更新していこうと思います。忘れないために!
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