貴族制度と呼び方について解説。最低限これだけは押さえておきたい要素とは?

ファンタジー小説で王族や貴族が出てくる小説を書く時に悩むのが、その身分制度における地位の違いや呼び方だと思います。

流行りの悪役令嬢ものにしても、主人公は公爵令嬢などのある程度身分の高い貴族の娘であることが多いです。

ファンタジーというフィクションの世界の話なんだから、貴族制度について詳しくなくても誤魔化しはききます。

この物語の中ではこういう世界で、こういう身分差があるのが当たり前なんだと、一からその世界観の身分制度を作り上げて説明してしまえば、それがその物語の中での常識となります。

ただ、それを読者に説明するのはかなり大変なことです。

ダラダラ説明した所で、正直読む方としては中々頭には入ってきません。

ある程度のリアリティ+α(オリジナル要素)

この図式があってこそ、補足の説明がくどくならずに済みます。

ということでこの記事では、最低限これだけはおさえておきたい! 貴族制度の仕組みと呼び方をピックアップしてお伝えしていきます。

貴族制度の基本

貴族とは功績や血縁により、君主(国王、皇帝、大公、天皇)から社会的特権を認められた人やその一族のことです。

他の社会階級の人とは明確に区別された、上流社会に生きるエリート集団。

彼等は毎晩華やかなパーティを開き、贅の限りを尽くしたドレスや装飾品で自身を飾り立て

豪華なご馳走に囲まれて、ワイングラス片手に優雅にお喋りを楽しんで

ダンスにあけくれる庶民とはかけ離れた生活をする別世界の住人です。(ハナの勝手なイメージ)

そんな上流社会に生きる貴族にも、階級があります。

皆がみんなワイングラス片手に優雅な生活を送っているわけではありません。

一言で貴族制度と言っても、その国や時代によってその在り方は様々です。

日本では明治維新後、世襲制(血筋によって爵位を引き継ぐ)の公侯伯子男の五等爵を基本とする華族制度が定められました。

公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の爵位の順番で力があり、爵位は貴族の格付けのようなものです。

爵位を持つ者とその家族を、日本では華族と呼んでいました。

ヨーロッパの貴族制度を模して作られた制度であり、それを無理やり日本語訳にしたものが下記の通りです。

グランドデューク(大公もしくは大公爵)

王以外の王族(王の息子や弟など)や分家の長などがあてはまります。

素直に訳すと偉大な公爵。公爵の中でもさらに力を持った、王に匹敵するほどの権力者。

生前の日本では存在しない爵位であり、プリンスを「公」ではなく、「大公」と訳してデューク(公爵)と便宜上に分けようとした使い方もされています。

大公が国を治めるとそこは大公国と呼ばれ、一つの国家です。

国を治められるくらいの権力者に与えられた称号と思っておきましょう。

デューク(公爵)

王族に連なる者や、それに匹敵する大貴族のことを指します。

日本における公爵と、ヨーロッパでのプリンス(Prince)、デューク(Duke)の訳語として使われている公爵では、意味が異なります。

日本での公爵は、五爵の中で第一位の地位であり、旧摂関家や徳川家、維新の勲功者が公爵位を授けられていました。

ヨーロッパにおける公爵(デューク)は、地方の領地を統治する上位の地方長官の事を指しています。

中世ではその領地を支配する封建君主の意味があり、近代では最上位の貴族の爵位(名誉称号)となりました。

公爵(プリンス)は小国の独立君主や諸侯王族の称号で、王族の血を引く血統的に与えられたものです。

英語でプリンスと言えば、王の息子や弟。

プリンセスと言えば、王の娘や姉妹などを指します。

つまり日本でいう皇族みたいなものです。

公爵(デューク)は諸侯の称号で、軍事的に優れた有力者を指しています。

この二つを日本では同じ「公爵」という言葉で訳そうとしたために混乱しやすくなっています。

便宜上「大公」と訳されている場合もありますが、全てがそうではありません。

軍事的にすごい働き(国を救うなど)をして戦果をあげて王様に認められた人→デューク(公爵)

報酬として、爵位を授け王女様を降嫁させて与えたなんて、よくある小説のネタです!

王が領土を王太子(長男)ではない息子(次男、三男など)や弟などに継がせて領地を治めるようになった→プリンス(公爵)

マーキス(侯爵)

領地を持った諸侯を指します。

諸侯とは、主君である君主の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許された臣下である貴族のことです。

日本では、公爵の下位、伯爵の上位で、五爵の中では二位に位置する爵位です。

ドイツではマルグラーフ(辺境伯)と呼ばれています。

国の国境付近など、重要な地域を任せられた軍事力のある貴族のことで、

有事の時には率先して動かねばなりません。

支配している領土も広く、普通の伯爵よりも権限が大きいのが特徴です。

王族以外で戦果をあげて公爵に上り詰めるのはかなり至難の業です。

そのことからも、侯爵は王族以外での実質最高位に近い存在です。

アール(伯爵)

王族の側近で、地方へ派遣されてその地を治めている地方領主。土地を持った貴族のことです。

Wikipediaによると、中世ドイツでは、「宮中伯」と呼ばれる大臣のように中央行政を担う役割もあったといわれています。

ローマ帝国では、宮廷に約10人ほどの宮中伯が居て、それぞれ担当する部署の政務を行っていました。

地方の諸侯が力を持ち、それを監視したり力を抑えるために派遣された宮中伯のほとんどは、争いの中で没落していったそうです。

領地による自活力がないため、敗北=没落の図式だったのでしょう。

逆に勝利すればその領地を手に入れ諸侯化することもできたそうです。

王に意見できるような権力を持った宮中伯も居れば、経営がうまくいかず領地を担保に借り入れを行う貧乏伯爵も居ました。

権力的にも金銭的にも上下のふり幅が大きい爵位であり、設定を深く考えていない場合など、伯爵として登場させておけば、後から色んな裏設定を作れる便利な爵位です。

実は辺境伯でした→隠れた権力者、侯爵級の大貴族として権力を振りかざせます

偉そうだけど実は貧乏伯爵でした→贅沢の限りを尽くす目も当てられないバカな悪役にどうぞ

バイカウント(子爵)

伯爵の補佐、副官をする貴族のことです。

伯爵に任された小都市や城の管理など、地方行政の官僚としての役割を担う仕事が主です。

子爵は伯爵の嫡男が爵位を継ぐまでの名乗る爵位、もしくは伯爵家の分家の当主が名乗る爵位として使われています。

この子爵、読者のミスリードを誘う場合にも使える爵位だったりします。

例えば復讐(ざまぁ)させたい時なんかに、本来の身分を隠して子爵として登場させておき、最後に実は強大な権力を持った伯爵や侯爵の子息でしたと種明かしをしてぎゃふんと言わせることも可能です。

バロン(男爵)

子爵以上の爵位を持たない村や町などを治めている一番位の低い貴族。

日本では地方を治める豪族のようなものです。

豪族とは、国家や諸侯などの広域政権の領域の内部に存在し、ある地方において多くの土地や財産や私兵を持ち一定の地域的支配権を持つ一族のことです。

簡単に言うと昔からその地方を牛耳っていた有力者。

イメージとしては地元に密着した経営を行う中小企業のような感じでしょうか。

大企業(爵位が上の諸侯)の傘下にある中小企業(男爵家)

大企業(仕えていたそれまでの諸侯)の経営が怪しくなれば、新たな勢力のある企業(別の有利な情勢の諸侯)の傘下となり、強かに生きていく。

仕える主君が不利な状況に陥ると、主を取り換える事はよくあったそうです。

またイギリスにのみ存在するバロネット(準男爵)という爵位は、法律上は貴族として扱われません。

バロン(男爵)の下位、ナイト(騎士)の上位として位置し、世襲の称号ではあるものの、貴族院にも議席を有さず、敬称も爵位を持たないナイトと同様のサーです。

準男爵は、功績をあげたけど貴族にさせたくない時に与えられた「名誉職」だったみたいです。

このように、時代や地域によっては貴族とみなされない可能性があるのが、男爵です。

ナイト(騎士)

騎士とは、中世ヨーロッパにおいて、国家や君主に尽くした功績に対する褒美として与えられた名誉的称号です。

一代限りの称号で、基本引継ぎはできません。(時代によっては出来る場合もあったそうです)

日本語では勲功爵、勲爵士、騎士爵、士爵、ナイト爵と訳され、貴族とはみなされません。

「騎士道」という言葉があり、日本の「武士道」とよく比較されます。

中世ヨーロッパにおける騎士と、日本における新選組のような武士。

互いに「騎士の十戒」や「局中法度」などとよばれる行動規範を遵守しなければなりませんでした。

小説のネタとしても、知っておくとよりリアリティのあるお話をつくれると思います。

騎士道と武士道の違いについては、また別途記事を作成予定ですので、少々お待ちください。



王族の呼び方とは?

王族や貴族の出てくる小説をいざ書こうとして困るのが、物語の中でキャラ同士の敬称をどうすればいいのかという問題です。

日本の場合なら、「〇〇様」「〇〇さん」「〇〇君」「〇〇殿」「〇〇先生」などのように氏名+敬称or称号だけで済みます。

普段使っているので、小説の中で生徒が先生に呼びかける時に「〇〇君」などと、ミスマッチな呼び方をさせる事はないと思います。

ただ普段使いなれない貴族の世界の物語を書く時は、そうもいきません。

正しい場面で正しい敬称をつけて呼んでいるかを意識しなければ、不自然な文章になってしまいます。

簡単に以下に王族や貴族の呼び方をまとめてみました。

王族の場合

「国王」や「女王」の敬称は基本「陛下」を使います。

国王の正妻である「王妃」、皇帝や天皇の正妻である「皇后(おうこう)」の敬称も「陛下」

女王の配偶者である「王配」の敬称は「殿下」

王の子供である「王子」や「王女」の敬称も「殿下」

 

王の母(前王妃であった王太后や皇太后)の敬称は「陛下」

王の兄弟(先王の息子)や姉妹(先王の娘)の敬称は「殿下」

王の兄弟の場合、貴族の爵位があるならばそちらで呼ばれます。

また、王の姉妹ですでに嫁いでいる場合などは夫の爵位+妃や夫人と呼ばれます。

王の叔父や伯父、兄弟の配偶者の敬称は「妃殿下」となります。

貴族の呼び方とは?

分かりやすいように例をあげて説明していきます。

例えば、ルクセンブルクの称号を得ているユリウス・シュナイダーさんがいました。

ユリウスが名前、シュナイダーは苗字、ルクセンブルクは爵位の称号です。

さらに、ユリウスさんの妻の名前をエミリア・シュナイダーさんとして考えていきます。

公爵の呼び方

公爵の正式な爵位名は「The Duke of Luxembourg」(Luxembourgの部分は爵位の称号により変わります)

正式な場で呼びかける時は「Your Grace(ユア・グレース)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Duke(デューク)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「ルクセンブルク公爵」

正式な場で呼びかける時の敬称は「閣下」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「公爵」となります。

「ルクセンブルク公爵閣下」もしくは「ルクセンブルク公」などのように、基本的に爵位+敬称で呼びます。

親しい間柄では「ユリウス」「ユリウス様」のように名前呼びで良いと思いますが、「ユリウス公爵」などのように個人名+爵位では基本呼びません。

個人名を入れたい時は「ルクセンブルク公ユリウス」と称されます。

侯爵や伯爵の呼び方

侯爵の正式な爵位名は「The Marquess of Luxembourg」

正式な場で呼びかける時は「My Lord(マイ・ロード)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Lord Luxembourg(ロード・ルクセンブルク)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「ルクセンブルク侯爵」

正式な場で呼びかける時の敬称は「閣下」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「ルクセンブルク卿」となります。

 

伯爵の正式な爵位名は「The Earl of Luxembourg」

正式な場で呼びかける時は「My Lord(マイ・ロード)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Lord Luxembourg(ロード・ルクセンブルク)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「ルクセンブルク侯爵」

正式な場で呼びかける時の敬称は「閣下」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「ルクセンブルク卿」となります。

侯爵と伯爵の場合「ルクセンブルク卿」などのように、「爵位号」+「卿」が基本で、「ルクセンブルク侯爵」、「ルクセンブルク伯爵」のように爵位名だけでも構いません。

個人名を入れたい時は侯爵なら「ルクセンブルク侯ユリウス」

伯爵ならば「ルクセンブルク伯ユリウス」と称されます。

子爵や男爵の呼び方

子爵の正式な爵位名は「The Viscount Schneider」

正式な場で呼びかける時は「My Lord(マイ・ロード)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Lord Schneider(ロード・シュナイダー)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「シュナイダー子爵」

正式な場で呼びかける時の敬称は「閣下」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「シュナイダー卿」となります。

基本的に姓+卿となります。

 

男爵の正式な爵位名は「Lord Schneider」

正式な場で呼びかける時は「My Lord(マイ・ロード)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Lord Schneider(ロード・シュナイダー)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「シュナイダー卿」

正式な場で呼びかける時の敬称は「閣下」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「シュナイダー卿」となります。

子爵と同様に、呼び方は基本的に姓+卿となります。

ただ個人名をつける時は子爵なら「ルクセンブルク子爵ユリウス」

男爵なら「ルクセンブルク男爵ユリウス」などのように爵を略さずに書きましょう。

準男爵や騎士の呼び方

準男爵や騎士の正式な爵位名は「Sir Julius Schneider」

正式な場で呼びかける時は「Sir Julius(サー・ユリウス)」(サー+個人名)

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Sir Julius(サー・ユリウス)」と呼びかけます。

これを日本語に訳すと

正式な爵位名は「ユリウス・シュナイダー卿」

正式な場で呼びかける時の敬称は「ユリウス卿」

少しくだけた場所で呼びかける時の敬称は「ユリウス卿」となります。

基本的に個人名+卿となります。

貴族の夫人の呼び方(公爵夫人、侯爵夫人、伯爵夫人、子爵夫人、男爵夫人)

公爵夫人の正式な爵位名は「The Duchess of Luxembourg(爵位号)」

正式な場で呼びかける時は「Your Grace(ユア・グレース)」

通常のパーティなど少しくだけた場所では「Duchess(ダッチェス)」と呼びかけます。

侯爵夫人、伯爵夫人、子爵夫人、男爵夫人は「Lady  Luxembourg(爵位号)」

準男爵夫人や騎士の妻なら「Lady  Schneider(姓)」と呼びかけます。

これらを日本語に訳すと、爵位を持った者の配偶者(妻)の呼び方は「爵位号+爵位+夫人」です。

公爵夫人なら、ルクセンブルク公爵夫人

侯爵夫人なら、ルクセンブルク侯爵夫人

伯爵夫人なら、ルクセンブルク伯爵夫人

子爵夫人なら、ルクセンブルク子爵夫人

男爵夫人なら、ルクセンブルク男爵夫人

貴族の息子や娘の呼び方

公爵、侯爵、伯爵の長男なら「Lord Luxembourg」(ロード+爵位号)

公爵・侯爵の次男以下なら「Lord Julius」(ロード+名)

伯爵の次男以下、子爵以下の息子なら「Mr Schneider」(ミスター+姓)

公爵、侯爵、伯爵の娘なら「Lady Emillia」(レディ+名)

子爵以下の娘なら「Miss Schneider」(ミス+姓)

これを日本語に訳すと、男子の場合「ルクセンブルク卿(爵位号+卿)」や「ユリウス卿(名前+卿)」で大丈夫です。

女子の場合は「ルクセンブルク公爵令嬢」などのように「爵位号+爵位+令嬢」と呼べばいいと思います。

レディやミス表記を使う場合は伯爵家以上なら「レディ+エミリア(個人名)」、子爵家以下なら「ミス+シュナイダー(姓)」となります。

個人名を使いたい時は「エミリア嬢」などのように「個人名+嬢」と言ってしまえば難しく考えずにすみます。

まとめ

ファンタジー小説によく出てくる王様や貴族など、その基礎を理解しておけばアレンジを加えて独自の世界観を作る事も可能です。

ただあまりにも独自性が強すぎると用語解説ばかりになってしまい、読みにくい。

そんな時は、既存の貴族制度をベースに考えていくとスムーズです。

王族や貴族の呼び方についても、常に正式な呼び方で書いていると、くどい印象を受けます。

ヨーロッパの爵位とは、領地(一定の行政区域)を正しく管理して下さいねと、王様に与えられた役職です。

格付けのランクはあるものの、西洋では日本のように役職の上下で過度に敬う文化はありません。

仲が良ければ名前や愛称で呼ぶし、正式な場では第三者の目があるため、改まった呼び方に変える。

それって私たちが普段生活している場合とそう変わらない事だと思います。

プライベートな空間では名前を呼び捨てていても、パブリックな空間では苗字にさん付けなど、呼び方を改める。

小説の中でも、キャラ同士の掛け合いがその場のTPOに沿ってさえいれば、それでいいと思います。

それゆえ、場所(公式の場か私的な場か)や新密度により、呼び方は日本語風にアレンジを加えてもいいんじゃないかなーっていうのが私の個人的な見解です。

私自身、貴族制度については奥が深く、把握しきれていない部分があるので、新たな情報を仕入れたら定期的に更新していこうと思います。

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